うちの彼氏は脳腫瘍13

脳腫瘍奮闘記
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↑の続きです。

悪性脳腫瘍を取り除く上でベストな手術である「覚醒下手術」が、アラヤちゃんは出来るかどうかわからない。
そう告げた三谷医師は、さらに言葉を続けた。

「覚醒下手術にせよ覚醒下手術ではないにせよ、手術をすることで今ある症状が良くなることは期待できません。
あくまでも現状維持が期待できる程度です。
このまま放置してどんどん悪化するのを阻止して、歯止めをかけるという意味合いが強いことは分かって下さい。
このまま放置してしまえば、どんどん腫瘍は染みわたっていって、もっともっと症状は重くなって、一人でできることがもっともっと少なくなって、やがて脳全体に染みわたれば命を落としてしまう。そうならないための治療です。
治療によって今ある症状を良くしたり治したりというのは、なかなかちょっと難しいです。」

要は、今困っていることはそのまま残るからね、ということだ。
言語を司る部分や右手足を動かす脳細胞が、ガン細胞に侵され一部がガン化しているのだろうから、失った脳機能が戻ることは期待していなかった。
でも、医療や科学的な知識に乏しい人は、「治療したんだから今まで困っていた症状はなくなるよねっ☆」と思い込んでいることがあるのだろう。
だから、三谷医師は事前に釘を刺してきたのだ。

「今まで説明した方針のもとの治療を希望されるのであれば、2か月後前後に手術の予定を入れます。
手術をするために色々と事前の検査をしていって、覚醒下手術ができるかどうかなどを含め、どういった手術がベストかを決めていくことになります。
それでいいですか?」
三谷医師は、患者を突き放すわけではなく、寄り添う時もありながら、でも厳しいこともきっぱり言う。
そんな医師だったらしい。
必要な説明は丁寧に繰り返ししてくれる。
実際、この日の診察は初診だったこともあり、30分以上掛けてくれたそうだ。

アラヤ「はい!」
一日でも早く手術を受けたかったアラヤちゃん。
本来なら今日にでも受けたいところだけど、事前準備があると言われ、2か月くらい先になると聞かされがっかりしたそうだが、大人しく受け入れたそうだ。

と、そこにアラ母が三谷医師に質問を投げかけた。

アラ母「あの……先生。再発する、ってことはあるんですか。」

アラ菜ちゃん
アラ菜ちゃん

やっぱりこの人わかってないね(^^;

再発も何も、ガンを全部取れないって言ってたじゃん~

そして三谷医師はきっぱりこう言ったそうだ。
「再発云々の前に、治すということが難しいです。完全に治すということが。
脳腫瘍の治療は完治させるのではなく抑え込む、というのが正しい表現になります。手術によって腫瘍の量を減らし、その後は抗がん剤ないし放射線治療をすることになります。場合によってはその両方をやります。
ですが、腫瘍細胞をゼロにするということはなかなか難しいのです。
腫瘍を抑え込んでいく治療をするが、いつか腫瘍がまた大きくなる時がきます。
その時はまた追加で再手術などの治療をしていくことになるのです。
乏突起神経膠腫であれば色々な薬の感受性があるので治療効果は出やすいのですが、それでも10~15年で半分くらいの方が亡くなるし、星細胞腫だともっと悪くて5~7年で半分の方が亡くなります。
そういう難しい病気に対して、これから治療に挑まないといけないということを、理解しておいて下さい。
何かをすれば絶対治るとか、何かをすればコロっと良くなるような、生やさしい病気では残念ながらないです。」

アラ母「……あぁ。」
と絞り出すような悲しそうな嘆息が漏れ出る。
アラ母は、脳腫瘍が悪性だと電話で告げられた時、泣きながらアラヤちゃんに
「大丈夫だからね。きっと良くなるから。治るから。心配しなくていいんだよ。」
と言っていた。
母親として、大事な息子がガンだということが受け入れられなかったし、治療をすればちゃんと治るに違いない、とそう思うことで心を支えていたんだろうと思う。
だから、「治療をすれば完治して、再発するようなこともないだろう。」とずっと考えていたんだと思う。

ここまで、三谷医師の説明を聞いていても、怒涛の情報量に頭がついてこない部分もあり、まだ「治療をすれば完治する。」と思っていて、むしろ思いたくて、そういう質問をしたんだろうな、と私は思った。

脳神経外科で今まで何人もの患者やその家族に説明を繰り返してきただろう三谷医師は、だからこそ事前に厳しいことをきっちり言ってきたのだ。
患者も、その家族も、気の毒ではあるが現実を早めに受け止めておく必要がある。
それが、インフォームドコンセントだから。
※インフォームドコンセント
医療行為を受ける前に、医師および看護師から医療行為について、わかりやすく十分な説明を受け、それに対して患者さんは疑問があれば解消し、内容について十分納得した上で、その医療行為に同意することです。すべての医療行為について必要な手続きです。もともとは米国で生まれた言葉で、“十分な説明と同意”と訳される場合もあります。
国立がん研究センターHPより

「特に脳という臓器が治療を難しくさせています。
腫瘍を取れば取るほど良いとは言え、全部取ってしまったらそれはもうその人ではなくなってしまいますから。」

診察室が重苦しい雰囲気に包まれた。
アラ母は厳しい現実に言葉を失ってしまった。

アラ菜ちゃんが雰囲気を変えようと、アラヤちゃんに声を掛けた。
アラ菜「……お兄ちゃん今なにが一番辛い?」
アラヤ「……? んー、……」
アラ菜「手足が動かないのが辛い?」
アラヤ「えーと、それはね、言葉が出ないのが辛い。」

 

三谷医師
三谷医師

それに関してはもう症状が出ちゃっているので、改善するのは難しいですね。

 

ぴしゃぁん!!!と三谷医師がぶった斬った。
わかっちゃいるが、容赦がない(^^;
同じ説明を繰り返すのが面倒くさくなったのか、とにかく間違った変な希望を持つと後が残酷なことになるからか、どちらかは分からないが、すぐさまぶった斬ってきたそうだw

↓に続きます。

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