三谷医師は総合病院から提供されたCT画像やMRI画像を診察室のPCに映しながら、アラヤちゃん、アラ母、アラ菜ちゃんにこう解説したそうだ。
<CT画像から判断できること>
・脳の左前部分(左前頭葉)を中心に、異質な組織がかなり広範囲に広がっている。
・脳室という水の入った小部屋があるのだが、通常左右対称なことが多いのに、片方がかなり潰れているように映っている。
こういったことがあると、基本的には第一に脳腫瘍を疑うので、MRIを撮ることになる。
なので、総合病院でもすぐにMRIを撮ってくれていたのだろう、と。
<MRI画像から判断できること>
・前頭葉を中心に白いシミのようなものが広がっており、その中に黒い虫食いのようなものがボコボコ広がっている。
・こういった虫食いのようなものがあるのはおかしいことで、その虫食いの中心に変なものがあり、そこから白いものが染みわたっているように見える。
・これはグリオーマ(悪性脳腫瘍)という病気の一つの特徴である。
・造影剤を使ったMRI画像は、体内の血管を見やすくするのだが、腫瘍と考えられる部分にはあまり血管が見られない。
・もし、腫瘍と考えられる部分に累々と血管が映って見えている場合は、「膠芽腫(こうがしゅ)」という一番悪いグレードの脳腫瘍の可能性が高い。
・だが、この造影剤の画像を見る限りではその「膠芽腫」ではなさそうと言える。但し、絶対ではない。
・現状で腫瘍はかなり大きく、症状も結構出ているのだけれど、これが急に大きくなったり症状が悪化するとも思えない。
・もちろん進行するだろうから、月単位では変化があるだろうが、日単位で急に悪くなるとは思えない。
・一緒に暮らしていないアラ母やアラ菜ちゃんは分からないかもしれないが、奥さんのような人と暮らしていれば、もっと前(何か月も前)から何となく症状に気付けていたんではないか、と思う。
・グリオーマは全て悪性で、時間と共に段々大きくなり、治療を全くしなければ脳の機能を損傷して、やがて死に至る病気である。
・グリオーマは悪性度に応じてグレードが2~4に分類されていて、一番悪性度が悪いのがグレード4の「膠芽腫」。
・「膠芽腫」は非常に難しい病気で、色々と治療をしても1年半で半数の方が亡くなってしまう。
・「膠芽腫」の可能性もゼロではないが、1年半くらいで亡くなるくらいの病気だからこそ、腫瘍の大きくなるスピードが非常に速い病気なので、進行がゆっくりだと考えられるアラヤちゃんは「膠芽腫」の可能性は低いと思う。
・グレード2と3のグリオーマは色々なタイプがあるが、大きく分けると「乏突起神経膠腫(ぼうとっきしんけいこうしゅ)」と「星細胞腫(せいさいぼうしゅ)」に分けられる。
・アラヤちゃんのMRI画像を見る限り、「乏突起神経膠腫」の特徴も、「星細胞腫」の特徴もあるので、画像だけではどちらとも言えない。
・腫瘍の大きさやタイプ、場所や反応などを見ながら、個別の患者さんごとに治療方法は色々別れていく。
・「乏突起神経膠腫」の方がわりと薬の反応が良い傾向があり、「星細胞腫」は比べると薬の反応があまり良くない。「膠芽腫」は一番悪い。
この時三谷医師が書いてくれたメモがこれ↓
で、三谷医師が言っていたことを後から調べたら、グリオーマの患者の「5年生存率」が公表されていた。
それをまとめたのが、これ↓
それから、今はあまり「余命宣告」というのをしないのか、「生存期間中央値」というものを用いることが多いようだ。
三谷医師も「余命」という表現は基本的に使うことはなかった。
ちなみに、生存期間中央値という考え方は↓な感じ。
※汚い字でごめんあそばせ~w
で、グリオーマの生存期間中央値のデータがこんな感じ↓
診察を受け、丁寧に解説してくれた三谷医師。
一番最悪な膠芽腫というグレード4の可能性は低いだろうと聞かされ、私たちはとてもほっとした。
本人が一番ほっとしていた。
なにせ、もう次の誕生日は迎えられないと思っていたのだからw
※うちの彼氏は脳腫瘍6にてw
でも。
一番良いタイプのグリオーマでも、10年くらいで患者の半数が亡くなる……。
運が良ければもっと生きられるかもしれないが、運が悪ければもっと短いかもしれない。
まだ50歳にもなっていないアラヤちゃんは、還暦を迎えられないのかもしれない。
最悪は逃れた。
でも、病魔はアラヤちゃんをしっかり絡めとって、逃がしてはくれないんだ、と強く思った私だった。