アラ菜ちゃんにアラ父の件を相談したところ、アラ菜ちゃんは電話でご両親と話してくれた。
アラ父としては、やはりご近所の方が自費治療をしたが効果がなく、本人が「騙された。詐欺にあった。」と言っていたのが印象深く、どうしても自費治療を信用できないようだった。
「100%効果がある。」という保証がある治療法でないと、アラ父もアラ母も受けさせたくないようなのだ。
そして、「自費治療」であることやその効果云々よりも、一番ネックになっているのが、その金額。
150万円という金額は、出せないわけではないが大金であるのも事実だ。そんな大金を、効果も保証しない自費治療につぎ込んで、効果がなかったらどうするのか。また、効果があったのかどう確認できるというのか、ということも反対する理由になっていた。
また、アラ父もアラ母も盛大な勘違いをしていて、標準治療を受ければアラヤちゃんの脳腫瘍は完治し、寿命は人並みに戻り僧侶のお勤めもまた元通りに出来ると思っていたらしい。
病院で先生にも言われ、私からも言われ、圭ちゃんからも言われて、もう3回以上言われてるのに、まだぜんっぜん分かっていないんだよ!?
や、私にキレられても……(^^;
お兄ちゃんがあと10年生きられるかわからないんだよ、って言ったら、『10年生きられないかもしれないの!?』って今更びっくりしてるんだから!(# ゚Д゚)クワッ
呆れたような、怒ったような、そして困ったように言うアラ菜ちゃんからは、誰も悪くないのに歯車が噛み合わない悔しさと悲しさがにじみ出ていた。
電話で話していた父と娘は段々ヒートアップしてしまい、喧々諤々のケンカになってしまったそうだが、最終的にアラ父は「誤解しないで欲しいが、自費治療に反対はしない。」と言っていたそうだ。
やるなら止めない。
だけど、賛成はしない。
それがアラ父とアラ母の出した、ギリギリまで譲歩した最終意見になったようだった。
両親の意見なんて無視して、やっちゃえばいいんじゃない?(´`)=3
と言ったアラ菜ちゃんだが、アラヤちゃんとしては
「みんなには同じ方向を向いて、支援して欲しい。」
のだそうだ。
みんなが「賛成」をしてくれないと、受けたくないと言うのだ。
めんどくせー!
やれ「握力が弱くなって箸を落としてしまう。」やら、「意識していないと物を置く場所がずれてしまう。」やらとグチグチ言っては、食事を開始する前に食器の位置をああでもないこうでもないと、延々直し続けるのに付き合うのでさえ辟易しているのに、治療方針で全員が同じ方向に向いてないと開始したくないとか、もう要求はいい加減にしてくれ!(´;ω;`)という気持ちになる私。
そして、アラヤちゃんは私に驚くべきというか、予想していたというか、まあ私にとってはとてもとても歓迎しない要望を言ってきたのだった。
圭ちゃんがお父さんを説得して(^_-)-☆
…………。
何なのこの無茶ぶり。
とてつもなく、ごめんこうむりたい要望だった。
病気が発覚する前のアラヤちゃんと口喧嘩をして、まともに勝ったことなどほぼない私である。
私よりも記憶力も説得するための論理的思考も理論展開も数段上のアラヤちゃんの、その父である。
しかも私から見ていてもアラ父は能力が高く、人生経験を豊富で、つい数年前まで現役で仕事をバリバリこなしていたような人物で、弁が立つのは間違いない。
アラヤちゃんの知能の高さから、ご両親の能力値の高さも伺えるし、普段のアラ父がデータに敏く、データ収集癖の高さ、その分析力の高さ、一度気になったことは解決するまで調べないと気が済まない性分をいかんなく見せているため、私は
とてもじゃないけど、私が説得できる人物ではない。
と判断することを余儀なくされたのだ。
それはもう、犬同士がケンカをおっぱじめる前にひっくり返って腹を丸出しにして降参する旨を伝えるレベルで、お手上げだと思っているのだ。
キャウンキャウン。。。
それを、
説得して欲しい
と言われてしまった。
病人から、である。
断り辛い……。
ひっじょーに断り辛い。。。
……読者様ならどうする???
わかったよ……。
ダメ元で頑張ってみるよ……(--;
そういわざるを得ない雰囲気を生み出すアラヤちゃんの前では、そう答えるしか選択肢がなかった私なのであった。