病院に着き、リハビリの窓口で受付をすると、言語聴覚士の方がすぐに現れ、検査室に通された。
アラ母や私も付き添ってよいとのことで、遠慮なく付き添わせてもらう。
言語聴覚士の方は笑顔を絶やさない明るい女性で、私やアラヤちゃんと同世代くらいのおばちゃんだった。
初めまして。言語聴覚士の阿川です。
私に向かってハキハキと笑顔で挨拶してくれた。
私も、
初めまして。鹿角の友人で筑森と申します。
と挨拶。
ちなみに、阿川さんは重装備だった。
何がって???
コロナウイルスが猛威を振るい、当然のように感染者の死に目にも会えないのが当たり前のような時期だっただけに、髪の毛は防護ネットで多い、身体も使い捨てのビニールエプロンで完全防備。
こちらがマスクしかしていないこととのギャップの激しさと言ったらなかったことよ……w
そして阿川さんはアラヤちゃんに向かって、
体調はいかがですか?
と尋ねた。
ああ……まあ、変わりないです。
本当ですか?(^^) この前は疲れましたか? 大丈夫でしたか?
いや、まあ、でも細野先生にやられたのと同じなので、まあ、別に……
えー! そうですか!? けっこう皆さん2回目以降は覚悟していらっしゃるので大丈夫なんですけど、1回目の後は疲れちゃって、『帰りの車は爆睡でした(^^;』って方も多いんですよー。
……ん?
そんなにハードなの???w
ああ、でも前回の検査で作業療法士の人に日付を訊かれて出てこなかったのは、焦ってしまいまして。
あー。唐突に言われると困りますよねえ!
と、あはは!と豪快に阿川さんは笑った。
ちなみに鹿角さんは日付を思い出す時はどうやって思い出しますか? 私なんかだとカレンダーを思い浮かべて、ああ今日は月末で31日は水曜日だから月曜日の今日は29日だな、って感じなんですけど。
カレンダーを思い浮かべてみたんですけど、今は前と違って法要のお務めがなく、カレンダーを見る機会がないので、ダメだったんです。
ああ~! そうですよねぇ。お仕事しなくなっちゃうとカレンダーとも縁がなくなりますもんね!
それに、『日付を答えるのを間違えたらいけない。』『これは脳機能の検査だ。』と思うと、余計緊張して答えが分からなくなってしまいます。
ああー!! でも、私たちは時間を掛けて見させて頂いているので、一回間違えたくらいでどうこうという影響はないので大丈夫ですよ。頻繁なものとか、よくあることとか、そういうものを拾っていくので、そんな緊張しなくてもオッケーです!!!(`・ω・´)b
父親譲りの気質で、細かいことにこだわり気にするアラヤちゃんを、阿川さんはガハハ!!!と笑い飛ばして安心させようとしてくれたw
なにはともあれ、検査自体は細野先生で免疫がついてたみたいで良かったですw その分だと、今日も大丈夫そうですね♪
とりあえず今日も1時間ほどやらせて頂きますので、よろしくお願いします。
え……?
毎回1時間がっつり検査するの……?(--;
それは確かに疲れるわな……。
えー、ではまず……今日は図形を描いてもらいたいんですねー。手先使うんですけど、大丈夫ですかね?
と、手足の麻痺を考慮して訊いてくれた。
大丈夫です。
ではこのペンを使って貰いますねー。で、図形は1つにつき1枚に描いてもらうので、1枚に図形をいくつも描こうとしてこじんまり描かなくていいですからね(^^)
はい。
じゃあ、まずは円を描いて下さい。
アラヤちゃんが多少いびつながら綺麗な円を描いた。
ありがとうございます。じゃあ、次は四角形を描いて下さい。
新しい紙に、今度はアラヤちゃんが綺麗な正方形を描く。
いいですね。じゃあ、次は立方体をお願いします。
立方体……
そういいながら、アラヤちゃんは立方体もちゃんと描けた。
透視の図形じゃないんですね。
ん? ああ、はい! 大丈夫です!(^^)
透視って……?となった私。阿川さんはアラヤちゃんの言っていることがわかったようだが、私は分からなかったので後日訊いたら、こういうことだった。
なるほどねw
私は塾の講師として図形を教える時、むしろ透視の図形しか描かなかったわw
※ちなみに、AB間の距離はルート3です。
次は時計を書いて欲しいんです。文字盤を意識して描いて下さい。
阿川さんがそういうと、アラヤちゃんはくすりと笑った。
……w
前回作業療法士の方にも試されたんですよね。
と苦笑して言いながら、アラヤちゃんはサクサクと絵を描いていく。
作業療法士と言語聴覚士で同じような検査をすることを指摘され、
あはは! どうしても被ってくるんですよねーw
と阿川さんは笑い飛ばしていた。
や、本当に元気な人www
次は、木を描いて下さい。
はい。
はい、結構です。では次は……あ、家を描いて下さい。
……と、はい。描けました。
アラヤちゃんが描き上げた家の絵を見せると、阿川さんは、
あ、家なんですけど、もう少し立体的に描けますか? すみません。ははは! 三次元な感じ!
と割と強めの口調で注文を付けた。
そんな阿川さんの唐突な要求にアラヤちゃんは面食らい、「えっ?」と驚きの声を上げたものの、頑張って家の絵を3次元で描いた……のだが。
↓
圭「長屋ぢゃん!www」
と私は思わずツッコミを入れてしまったw
それに対して「えへへ(^^;」と照れるアラヤちゃんだったw
じゃあ、人の姿を描いて下さい。
アラヤちゃんが人の絵を描いていると、
もう少し詳しく描いてもらっていいですか?
と、抽象的な部分を指して阿川さんは注文を付けた。
はい。良いと思います。
そうしましたら、……ええと。このページに線がありますよね。この線の真ん中だと思うところに印を付けて下さい。
ん? これは細野医師の検査でもやったやつだ!
はい。
とさっくり終わらせる。
はい、ありがとうございまーす。それでは描くのはここまでにしたいと思いまーす。
と言って、阿川さんは次のテストの資料を取り出してきた。
さて、次はどんなテストをするのか……?