うちの彼氏は脳腫瘍17

脳腫瘍奮闘記
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↑の続きです。

一方、県立病院での最初の受診を終えたアラヤちゃんは、次の日から調子が悪そうだった。
「昨日より右半身を動かすのがしんどい。」と訴えていた。

病状の悪化、というよりは今まで体調不良を隠そうとしていたのが、隠さなくて済むようになったために緊張感から解放された反動のような気がした。
それに、昨日は長時間の受診や、頑張って医師や家族とも会話したし、かなり疲れたことだろう。
本人も「昨日は病院に行って疲れたしね。」とのことだったので、私は彼の不調を「そっかそっか。」と聞き流しつつ、念のために記録しておく程度に留めておいた。


↑こんな感じでスマホのメモアプリに記録してた。

不調を隠さなくなったアラヤちゃんは、細かく自分の状態を報告してくるようになった。
別の日には、
・右手の痺れが発生。右足は変化なし。
・顔面右半分は常に痺れるようなっていて、度合いも強くなり範囲も広がってきている。
・1年位前から頑張って意識しないと表情が作れない。

またある日は、
・今日は顔面の麻痺がより強い。
・手足のしびれは軽度。
・頭痛が中程度あり。

と言ったように、その日により「顔面右半分の麻痺」「手足の不自由さ」「頭痛の強さ」の変動を言って来ていた。
それと共に、診断はされたものの今は待つしかないという状況に対する苛立ちも見せ始めた。
自分の不調が気のせいや一過性のものではなく、悪性脳腫瘍というタチの悪い病気のせいだと知った。
医師からは「失った機能は元には戻らない。」とはっきり断言されてしまっていた。

症状が進んでしまったら、進んだ分はもう取り戻せない。

アラヤちゃんはその恐怖に覆われ、目の前が真っ暗になり、クラクラするような感覚だっただろう。

今日はいつもより手足の動きが悪い気がする。
そうは言っても、そしてそうは自覚しても、これは病状は進行していない範囲での変動内なのか、それとも病状が進行してしまったから動かせなくなってしまったのか。
その判断は誰にもできない。MRIを撮ってみなければ分からない。撮っても分からないかもしれない。
それはアラヤちゃんも分かっている。でもいちいち動揺してしまう。
そんな辛さや恐怖心は、誰にも分かってもらえない。
もし実際に病状が進行していたとしても、医師は「ああ、進行してしまいましたね。」程度で済ましてしまうだろう。
手足の自由、話せる言葉の質と量、命の残りの時間……。
自分だけが失うことを恐怖している。
圭だって、両親だって、妹も医師も、しょせんは他人事だから、自分が思う恐怖の強さは伝わらない。
確かに周りの人たちは献身的に思ってくれている。
なのに強く感じる孤独感。
そしてきっと思っただろう。
「なんでこんな病気になってしまったんだろうか。」
考えたところで仕方がない。それは分かっている。
それでも考えずにはいられない。
アラヤちゃんはそんな気持ちだったんだろうな、と見ていて思った。

私たちの共同生活では、アラヤちゃんが料理を担当し、私が洗い物を担当している。
私は仕事で帰りが遅いので、料理スキルが圧倒的に高いアラヤちゃんが食事の支度をしてくれた方が、時間を効率的に使えるからだ。
だけど、その料理の手順が今までのようにぱっぱっとは頭に出てこない。いちいちモタついてしまう。
同時に複数の料理が出来なくなった。
一つの料理に集中していると、もう一つの料理の進行状況を考えることが出来なくなっていたのだ。
(煮物を煮ながら魚を捌いて刺身を造る、などのマルチタスクが出来なくなったので、煮物を焦がすことも増えていた。)
そのうえ、手に力が入らないので、フライパンを持つ手を上手に動かせないことが増えた。
思うように身体を動かせない苛立ちから、「料理をするのは今日で最後!」と宣言された日もあった。
※結局、その後も料理してたけど。

私は私で、仕事を休んでアラヤちゃんにつきっきりと言うわけにはいかない。
不安な気持ちを抱えながらも出勤しないわけにはいかない。

アラヤちゃんが強く拒むので、ご両親の家に身を寄せてくれない以上、昼間のアラヤちゃんは一人で私たちの住む家で過ごしていた。
医師が「てんかん発作が起こる可能性がある。」と言っていたと聞くと、もし料理中にてんかんを起こしてしまい火事になったりしたらどうしよう、てんかんで転倒して頭を打って意識を失ってしまってたらどうしよう、そんな不安がどうしても拭い切れない。
LINEを送っても既読にならないと、ことさらその不安は強くなってしまったのを、今でも強く覚えている。
「なんで30分も経ってるのに、既読が付かないの?😰」とハラハラした気持ちになるのに、

アラヤちゃん
アラヤちゃん

あ、ごめーん。

ゲームしてた。

(・ω<) テヘペロ

とかヌケヌケと言いやがるのだw
そしてムカつく気持ちを必死に抑える私……。
や、まあね。勝手に心配してるだけだし、私だってLINEにすぐに気付かないこともあるし……。

 

日常的に「発作が起きたらどうしよう。」「今後どうなるんだろう。」「手術は上手くいくだろうか。」ということは、アラヤちゃんだけではなく、当然家族や私も思う。
「どうして私たちにこんな未来が待ち受けていたんだろうか。」と考えても仕方ないことを考え、誰を恨めばいいのかわからないのに恨めしい気持ちを抱いてしまうのだった。
そして消化できないそう言った不安や恨みは、アラヤちゃんと周りのみんなに重苦しくのしかかっていた。

そんなやりどころのない負の感情を抱える日々を過ごしながら生活を重ねていたら、アラヤちゃんのMRI検査の日はようやくやって来たのだった。

※次回! アラヤちゃんのMRIで衝撃の出来事が!?
↓に続きます。

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