社会保険労務士の事務所に出向いた私とアラヤちゃん。
そこはこじんまりとした事務所で、案内された相談室は6~8畳くらいの広さの小部屋だった。
そして現れた女性は、
「初めまして。相談員の川口です。」
と名刺を差し出してきた。
受け取った名刺を見ると、その肩書は「相談員」となっていて、「社会保険労務士」とは記載されていなかった。
ということは、無料相談では社会保険労務士は出てこず、事務所の職員が相談に応じる、といったところなのだろう。
早速相談を開始し、県立病院のソーシャルワーカーさんと話した結果、障害年金を「てんかん」でも「失語症」でもなく、悪性腫瘍が体内に残存している場合に該当する「その他」で申請することを勧められたことを伝えた。
そして、2級の障害年金が狙える項目に〇を付けて貰えると医師から言って貰えたことも伝えた。
……が。
川口さん
「『その他』で申請する場合、この項目が『ウ』だと確かに2級の判定がでることもありますが、確率としては低いんですね。確実性を狙うなら、『エ』が望ましいんですが……それは……。」
無理だと医師から言われています。
「その他」での障害年金を申請する場合の診断書には、障害の重さの程度を医師が診断する欄がある。『ア』が一番軽くて、『オ』が一番重い障害となる。
ソーシャルワーカーの山田さんは、『ウ』だと障害年金2級の可能性が出てくると言っていた。
言っていたが……、川口さんの表情は明るくなく、『ウ』では2級が通る可能性が低いと言われてしまった。
だが、三谷医師からは『エ』は無理だ、とはっきり言われている。それに、はたから見ていてもアラヤちゃんの等級が『エ』だとはとても思えない。
こ、これは再び詰んだ……!?
と思ったら。
川口さんはこう言って来た。
川口さん
「ただですね。精神障害手帳を申請する際の診断書を拝見して、筑森さんがまとめて下さった普段の現状を拝見すると、ちょっと違和感があるんです。
果たして本当にこの診断書は、鹿角さんの現状を現わしているのかな、と。」
↑の診断書のコピーも持参し、見せてあった。
川口さん
「例えば、『適切な食事摂取』の項目です。
診断書では『自発的にできる』となっていますが、筑森さんの文章を読む限り『鍋が吹き零れていてもどうすればいいか分からない。』とあります。これで果たして適切な食事摂取ができると言えるのか疑問です。適切な食事摂取とは、適切に食事を用意するところから始まり、きちんとバランスの取れた食事ができるかどうかです。なので、この診断は現状を反映しているかというと、疑問な部分があります。」
ただ、てんかんの発作が起きると、なんです。
てんかんの発作が起きなければ問題なくできてしまいます。
できてしまう、というのも変な言い方だが、てんかん発作の影響がなければ特に問題がないのは事実なので、そういった私に対して──。
川口さん
「でも、いつてんかんが起きるか分からない以上、食事の支度がリスキーなのは変わりませんよね?
それも診断書には反映させるはずなんです。」
と、ばっさり切り捨てて見せた。
へー。そうだったのかぁ。
さすがプロ。詳しいわ~。
途端に目の前の川口さんが頼もしく見えてくる私。
川口さん
「それから失語の程度ですが、こちらもてんかん発作が起きると普段とは変わりますか?」
発作が起きた後は、しばらく喋れなくなります。
1日に何度も発作が起きることもあって、5回とか起きた場合は次の日まで影響が残ることがあります。
川口さん
「なるほど……。と、なるとですね。
『他人との意思伝達・対人関係』の部分も、もう少し重く診断して頂ける可能性は高いかな、と思いますね。」
おおっ!
そういう切り口を見せるか!!
すげえ、さすがプロ!!!
川口さんと話していると、どんどん診断書の症状が重くなっていく!!!
……続く!!!