うちの彼氏は脳腫瘍7

脳腫瘍奮闘記
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↑の続きです。

誕生日の当日に、電話deガン告知という稀に見る気の毒な体験をしたアラヤちゃん。
そんな彼は鹿角かづの家の長男だが、実は妹がいる。
牛角うしづの家に嫁いだ妹・アラ菜ちゃんは普段東京に住んでいるが、非常にさっぱりした性格をしているためヲカマとの相性も良く、私とも「やほー」と気さくに話し合う仲だ。
※ヲカマはいわゆる女に甘えた女(例:男の前では態度が違うタイプ、上目遣いでお願い事をするタイプ、鼻にかかった喋り方するタイプなど)が嫌い。
※どれくらい嫌いかと言うと、そんな女がゲイバーに来ると「ブス」呼ばわりされ、ダメ出しを連発されることうけあい。

牛角家の長男のアラ太郎(アラヤ義弟)も気の良い人で、夫婦そろって私とアラヤちゃんの関係を知っていながら、普通に接してくれる。
※鹿角家のご両親には私たちの関係は伝えていない。ただの友達、と言うことになっている。
※でも、鹿角家の両親も、うちの筑森家の両親も、薄々感づいているとは思うけどねー。

ちなみに、鹿角家の面々と私がどれくらい仲良く過ごしているかと言うと、大晦日の夜に鹿角家の実家に泊まりに行き、元旦の朝を鹿角家で迎えるほど。
北海道出身の鹿角家は、大晦日の夜の食事をとても大事にする習慣があるのだが、その食事の席に同席させてもらっている。毎年、牛角家一家も大みそかには鹿角家実家にやってきて、みんなで年末年始を過ごしているのだ。
※北海道出身の方はご存じかもしれないが、北海道では元日の朝よりも、大晦日の夜にご馳走を食べて宴席を設けるのが風習らしい。
※東京生まれ東京育ちの私にはびっくりな習慣。小豆の生産地のくせに北海道の赤飯は甘納豆だと知った時並みにびっくり( ゚Д゚)

↑大晦日の晩餐の図(byアラヤ画伯)

 

普段離れて暮らしているし、牛角家の一人娘・アラ莉ちゃんの育児に忙しいアラ菜ちゃん。
そんなアラ菜ちゃんに心労をかけまいと、アラ母は脳腫瘍のことに関して、その詳細がはっきりするまで黙っていた。
だけど、思わぬ経緯だったけど悪性脳腫瘍と告げられ、「これはもう話すしかない」とアラ菜ちゃんに電話で今までの経緯を伝えたそうだ。

アラ菜「お母さん、伝えるのが遅いよ。はっきりするまで心配かけたくないから、って言ったって、家族なんだから。」
アラ母は、アラ菜ちゃんからそう叱られたらしい。

アラ母の気持ちも分かるし、アラ菜ちゃんの気持ちも分かるから、私は何とも言えなかった。

誰かに対してアラヤちゃんの病気のことを伝え、自分の口から「悪性脳腫瘍かもしれない。」と言葉にすることで、もしかしたら本当に悪性脳腫瘍になってしまうかもしれない、という恐怖もあっただろう。
大事な自分の息子が命にかかわる病気だなんて信じたくないから、そのことをなるべく考えたり口に出したりしたくなかっただろう。
豪胆な部分もあるが、基本的に繊細なアラ母には、言えなかっただろうな、と思う。

一方で、人情家だけど合理的で淡々と割り切ることも比較的出来るアラ菜ちゃんは、状況をしっかり把握し、調べられることがあるなら事前に調べて万全を期して臨みたいタイプ。
突然言うなや、という気持ちになったんだろうし、家族なのに教えて貰えなかった寂しさを感じたのかもしれない。

二人の間で感情のすったもんだはあっただろうが、アラ菜ちゃんに事情が伝わったことで嬉しいことが起きた。
県立病院の受診予約日、アラ菜ちゃんが仕事を休んで診察に同席してくれることになったのだ。
これは私たちにとってはとても嬉しい出来ことだった。

アラヤちゃんは病気のせいで物事の説明が上手に出来ない。
アラヤちゃんのご両親は賢い方たちだけど、いかんせんご年齢がご年齢なので、医師の言う説明が良く理解できずに誤解してしまうことが多々ある。
※さらに言えばアラ父は難聴でそもそも医師の言っていることがわからないことも多い。

私が家族ではないために診察に同席できない以上、アラ菜ちゃんが診察に同席してくれるのは、状況把握がより正確になるので、とてもありがたかった。

そして決戦はある日の月曜日。
鹿角家に集結するアラヤ、アラ母、そして私。
アラ菜ちゃんは東京から直接県立病院に来てくれることになっている。

よし! じゃあ、出発するか!
そう意気込んだ時。
鹿角家の電話が鳴りだした。

ったく、こんな時に誰だよ(--;
と思う私たちに向かって、受話器の口を抑えたアラ母がこう言ったのだった。

「今日は急患が立て込んでるから、診察予約を後日にずらしてもらえないか、って病院からなんだけど……( ;ㅿ; )」

↓に続きます。

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