さて、である。
自分より格上の頭脳を持った相手を説得するにはどうすればいいのか。
私はそのことで自分の頭の中の知識と戦略を、フル活動した。
幸いなことに事前情報はある。
なぜアラ父が自費治療を嫌がっているのか、という理由を知っている。
「ご近所の方が自費治療をしたが、効果を実感できず『騙された。』と言っているから。」である。
感情を前面に押し出され、
とにかく自費治療は嫌なんじゃあ!
生理的に受け付けんのじゃあ!!
と、感情的に完全拒否の構えにされると困るけど、アラ菜ちゃんからの話を聞くと
やるなら反対はしないが、賛成はしない
というスタンスなので、感情的に完全拒否!!!という風でもなさそうだ。
①必ず治る保証がないと嫌。
②高額であること。
③脳腫瘍の重大さを理解していないこと。
この辺が攻めどころだろうな、と判断した。
そこで私が用意した言論は、次の通りだった。
①必ず治る保証がないと嫌。
どんな治療も100%絶対治る、はない。また、どんなに簡単な治療にでもリスクは必ずある。
比較的安全とされている白内障の手術でさえ、時にはリスクがあると言われている。
一般的に用いられている風邪薬にだって、重篤な副作用がでることがある。
今回検討している自費治療に限らず、治療法に絶対を求めるのは酷と言うものだ。
②高額であること。
自費治療はまだまだ新しい治療法だし、国も高額な治療方法をすぐに保険治療に加えてしまっては医療費を圧迫するので認めたがらないだろう。特に高額な治療であればなおさらだ。
治療の内容やメカニズム、効果に目を向けることなく、価格だけを見て判断するのは、もし良い効果を生むかもしれなかったことを考えると、本人にその金額を負担する貯蓄があるのであれば、
逆に自費治療にトライしなかった後悔
が、アラヤちゃんの死後、遺族を苛むのではないか。
(私の知る限り、特にアラ母はそういうタイプの人だ。「あの時、自費治療やっていれば、アラヤはもうちょっと長く生きられたのかしらねぇ……。」とか、寂しそうに呟くタイプだということを、知り合って10年以上の私は知っている。)
③脳腫瘍の重大さを理解していないこと。
腫瘍の摘出手術にさえ反対していたご両親だ。
アラヤちゃんの余命が残り10年もないかもしれない、という現実を受け止めていないことを考えると、はっきり言ってコトの重大さが分かっていないし、悪性脳腫瘍という病気を甘く考えているとしか思えない。
大切な息子の命の時間は現状では限られており、標準治療(手術・抗がん剤・放射線治療)を受けてなお長くはないということを伝え、その限られた命の時間を延ばすために、やれることはやっておいた方が良いと伝えたら、考えを変えてくれるかもしれない。
早速私は、資料を用意した。
まずは現状を知ってもらうための資料として、
脳腫瘍のグレードによる5年生存率の表↑と、
脳腫瘍のグレードによる生存期間中央値(同じ病気を発症した人の半数が亡くなるまでの期間)の表↑を用意した。
※ちなみに、現段階ではグレードも乏突起神経膠腫なのか星細胞腫なのかも分かっていない。
※手術の後の病理検査で判明しているが、それはこのお話がそこに追いつくまではお待ち下さい。
そして、私が勧める自費治療・自家がんワクチンに関する資料を、自家がんワクチンのホームページからダウンロードして印刷した。
↓こんなやつ
そしてある程度の問答を想定して、私にできる事前準備を済ませたところで、ご両親にアポイントを取り、私とアラヤちゃんはご両親に会いに行くことになったのだった。