うちの彼氏は脳腫瘍41

脳腫瘍奮闘記
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

脳腫瘍奮闘記の目次はこちらから(^^)
※↓の画像をクリックしても飛びます♪



↑の続きです♪

アラヤちゃんの脳腫瘍の種類によっては、2年半で寿命が来てしまう確率が50%と聞いて、言葉を失う二人。
厳しい現実を突きつけられ、辛い顔をするご両親だが、一番辛いのはアラヤちゃんだろう。
自分に残された時間はあとどれくらいなのか。そのことは毎日のように考えているだろう。
それと同時に、残された時間は短くないはずだ、という願いにも似た気持ちで案外長く生きられるかもしれない可能性に縋ってもいたことだろう。
脳腫瘍のタイプはまだわからない。だから長いかもしれない。

だけど、短ければ50%の確率で2年半後に死んでしまう。

そんな現実を、はっきりとした言葉にして、文字にして、突きつけられてしまったのだ。

アラ父
アラ父

で、でも、手術を受ければ、完治するんじゃないのかい?

圭

手術は、脳腫瘍の量を減らして延命することと、摘出した腫瘍の病理解剖で種類の判別が目的です。細野先生も言っていましたが、物理的に腫瘍を全て摘出することは可能ですが、それはアラヤくんを廃人にするのと同じことなので、それを避けると手術はしても腫瘍を残さざるを得ないんです。
かと言って手術を受けなければ、適切な治療を何も受けられず、もっと早く寿命を迎えることになってしまいます。

 

アラ父
アラ父

……こんなに短いのか。

生存期間中央値の表を手に取り、驚きの声を上げるアラ父。
私は自家がんワクチンの資料の中から、あるデータを示した部分をご両親に見せた。

圭

脳腫瘍の最悪なケースのグレード4でこの自家がんワクチンを実施した場合、実施しなかった場合と比べて余命(生存期間中央値)が1.3倍になったと言っています。

この1.3倍はバカにはできないだろうこと。
もしこれが脳腫瘍の一番タチの良いものの場合、単純計算で余命(生存期間中央値)が11.6年から15年に伸びること。
がん患者にとってその差はとても大きいと考えられることを、私は説明した。

圭

がん治療の基本の3本柱は、手術・抗がん剤・放射線です。
でも、脳腫瘍はその性質からすべてのがん細胞を摘出することは出来ず、脳細胞の特殊性から使える抗がん剤は限られているそうです。
だからこそ、残さざるを得ない腫瘍を増やさず、転移させず、そして減らすことに貢献できる可能性があって、最悪なグレードの膠芽腫(グレード4)にも効果があったという自家がんワクチンは、試してみる価値があると思うんです。

現時点での余命を算出することは不可能です。それはがん患者全員に言えることだと思います。なので、自家がんワクチンをやったから余命が伸びた・伸びなかったということは判定できません。なので、100%効果があると言うことは言えませんが、100%効果がないとも断言できないと思うのです。

そして、アラヤくんの余命が長くない可能性がある以上、効果が実際にはなかったとしても、チャレンジしてみる価値はあるのではないかな、と僕は思います。

アラ父
アラ父

うーん……。

アラ父がしょげたような、困ったような表情で息を漏らした。
アラ菜ちゃんから電話で言われてなお、平均余命のデータを見せられ動揺していた。
やはり脳腫瘍の現実を受け止め切れていなかったんだろうな、と思う。
それが資料として目の前に突きつけられ、アラ父の気持ちも揺らぎ始めているのが見て取れた。

アラ父への攻めどころ、
①必ず治る保証がないと嫌だと言っている点
②高額である点
③脳腫瘍の重大さを理解していない点
のうち、①と③はもう攻め切ったかな、と判断した。
脳腫瘍の余命の現実を突きつけ、完治する病ではなく延命に努めるしかないのだということ。
もはや治る・治らないという問題ではなく、いかに残された時間を伸ばしてあげるかのステージにいるのだということ。
そして、この余命の短さにとって、余命を1.3倍にする可能性のある治療法は有意義なのではないか、ということ。
それは資料と言う視覚的情報と、私の説明による聴覚的情報の両方でなんとか理解してもらえたと思う。

残りは、
②高額である点
である。

圭

それから、料金のことですが、どうしても保険適応されていない高度な医療が高額になるのは仕方がないと思います。
私はむしろ、「払える範囲の金額」で良かったのではないかと思います。
逆に払える範囲の金額だからこそ、悩んでしまうこともあるでしょうけど、ある程度効果が見込める治療法を、ただ何となく自費治療は怪しい気がするから、という理由でやらなかったら、いざアラヤくんの命が終わった時
あの時やっておけば良かった
という後悔をしないと言えますか?

アラ母
アラ母

………。

予想はしていたが、アラ母がここで苦悩の表情を浮かべた。
他人事だったら「そんな怪しい治療、よしておけばよかったのにね。いくら治らないがんだからって、150万円もかけて結局亡くなってしまったじゃない。」と思うかもしれない。
でも、こと相手は自分の大切な息子である。

後悔しないだろうか?

そんな思いが胸の中を走り回ったに違いない。

そして、それはアラ父も同様だったらしく、

アラ父
アラ父

正直、圭くんがここまでしっかり調べているとは思わなかったんだよ。
確かに、この資料を見る限り効果がある程度見込まれて、寿命が伸びる可能性があるなら、やらなかった方が後悔するかもしれないなぁ……。

……え?
「正直、圭くんがここまでしっかり調べているとは思わなかった。」って??

なに、俺、適当に仕入れた情報で
「こんなんあるけど、やってみたらっ!?(^_-)-☆」
的なノリで勧めたと思われてた……???

しんがい(# ゚Д゚)クワッ

でも、それなら話は早い。
要は、「思い付きの軽い気持ちで高額な治療を勧められている。」と勘違いしているご両親に、「ちゃんと資料を確認し、検討に検討をしっかり重ねた上で勧めているのだ。」と言うことアピれば問題は解決しそうだ。
そしてそれは、これまでのやり取りでほとんど解消していると思われるので、私は最後の一押しをした。

圭

それに、私もこの治療を絶対やらないといけないとは考えていません。
主治医の先生が自費治療に強く反対するようであれば、今後の治療にも影響が出るでしょうからその理由をきちんと伺って、納得できればこの自家がんワクチンは見送ろうと思っています。
なので、あくまで治療をやると決めているわけではなく、状況や主治医の意見次第では「やらない。」という可能性も充分あるということなんです。
そして、やるとなった場合、「ご両親が反対している状態。」でやるのと、「ご両親が応援している状態。」でやるのとでは、心理的な問題で治療効果にも影響が出てしまうかも知れないと思うんです。
だから、どうか応援して貰えませんか?

ご両親の意向を無視して、何が何でもやるわけではなく、冷静な第三者で主治医でもある医師の意見も聞いて決めるのだ、と引いて見せた。

アラ父
アラ父

いや、本当にアラヤのことをここまで考えてくれて、こんなにもしっかり調べてくれていたとは知らなかったよ。申し訳ない。
私としては、ご近所の方が「騙された。」と言っていたので、「こういう事例もあるから注意した方が良い。」ということを言いたかったんだ。

そういうことなら、こちらとしてはアラヤの希望を断つような真似はしたくないし、自家がんワクチンをやったらいいと思うよ。

アラ父が、落ちた!!

アラ父
アラ父

お母さんもそれでいいか?

アラ母
アラ母

……あたしは良く分からないから、お父さんがそうならあたしもそれでいいわ。

そしてアラ母も、落ちた!!!

こうして、ご両親の自家がんワクチン反対騒動は幕を下ろしたのであった……。
なんのことはない。
単に私が気軽に提案したと勘違いされていただけだったのだった(^^;

はー、緊張した……
(´▽`) ホッ

アラヤちゃんもこうしてご両親が理解してくれたことで、とても安心したようで、その後のお茶の時間ではリラックスしてとても多弁になっていた。
そんなご両親とアラヤちゃんを見て、鹿角家の緊張と不和が解消され、またいつもの和気あいあいとした家族に戻ったことを、私はほっこりして見守るのであった。

↓に続きます♪

タイトルとURLをコピーしました